空港

梅雨の話

成田空港発の上海行き最終便

最終便の怖さ

 以前は上海虹橋国際空港に夕方着く便を良く使用していた。バスを利用して市内へ入るのである。その内上海浦東国際空港が出来、国際線が浦東空港に移ってからも、バスを利用していたが、上海に行く回数が増えると節約の為、運賃の安い最終便を愛用するようになったのである。

 最終便で浦東空港に着くと、大体現地時間で夜11時過ぎである。着陸の遅れや入国審査や荷物の受け渡しで、空港を出るのは12時位になってしまう。市内に入るには更に40から60分かかる。

 空港を出ると早く市内に行かねばと気がせく。バスは無いのだから交通機関はタクシーしかない。見るとタクシー乗り場は長蛇の列である。ここに白タクが入り込む余地がある。ロビーには夜中近いというのに得体の知れない人がうごめいている。「タクシーはどう?」、と呼び込みも激しい。

 空港から市内へ行く交通手段をなんとか改善してもらいたいものだ。磁気列車も速く観光としては良いが、実際の利用となると走行区間や営業時間帯が中途半端である。

 空港から市内に入る前に、まず両替をする必要がある。安ホテルでは両替が出来ないので、ホテル代と交通費相当の中国元紙幣が欲しい。カード決済の方法もあるが、スキムされる恐れがあるので、用いるのに抵抗がある。
 
 ところで空港内の両替のできる銀行は一般人の出入りするロビーにある。よく注意してみると誰がどれだけたんまり両替したかが分かる。これは正直、危険と言わざるを得ない。たんとお金を持った人が
狙われる可能性は十分あるので、旅行客のみが入れる区域に別途設けて欲しいものだ。

 (そう長いこと思ってたら、2008年早々の事であるが、検問所を出る手前の奥まったところに中国工商銀行の支店ができていた。探す気でないと見過ごしてしまうほど、ちとてわかりにくい。)

 検問所を出て一般人の出入りするロビーで、僕は両替するために銀行の窓口の前を並んでいた。窓口は2つくらいあり、5人から6人位の人が並んでいたであろうか。そのうち首から身分証明書をぶら下げた空港の職員らしい人が、「こっちに並んで。」、とか言っているので、それに従い並んで自分の番になるのを待っていた。

 両替が終わり、さてどう市内に入ろうかと思っていると、さっきの空港の職員らしい人が、「市内に行くのか?、ホテルは予約してあるのか?」、と聞いてきた。で、「ホテルは予約済み、市内へ行くつもり。」、と答えると、どっからか紙のメニューを持ってきて、「空港から市内に入るにはこれだけの運賃がかかる。」、と説明しだした。

 僕は、「高い!」と言った。通常価格の約3倍はしていたのだ。そう言うと、「これは外車の場合で、国産車ではどうか?」、と聞いてきた。国産車でも約2倍の運賃だ。まっ、遅いしタクシー乗り場で長蛇の列の後ろに並ぶのもかったるいと思い、この条件を受け入れたのである。


 「こっちに来て!」、といってその空港の職員らしい人は駐車場の方へ案内してくれた。空港から少し離れた外灯も無い、暗い駐車場には運転手と見られる若い人が車から出て待っていた。

 空港の職員らしい人は僕を助手席に座るように言い、自分は僕の丁度後ろの席に座った。僕ら3人はドアを閉め、目的の場所に行くべく発車した。が、暗くて分からなかったが、後部座席にもう1人いる気配を感じたのである。

 あっ、やばい。僕は震え上がった。3人対1人。これは圧倒的に不利でまずい。このまま人気の無いところに連れて行かれ、さっき両替したお金を奪われ、翌朝はどっかの川か海近くに、ぷかぷか浮いてしまうことを恐れた。身元不明人として内々に処理されるのがおちだ。この身元不明人は発表されていないが相当数いるのではないか。

 また危ない目にあうのか、と、僕は前に起きた数回の危険な出来事を思い出していたが、それを払いのけ、通り過ぎる街灯のあかりをたよりに、ドアロックしてあるかどうかを確認していたその時、後部座席に座っていると思われる気配の男が、英語でどの位で着くか、と聞いているではないか。

 あっ、外人、相乗りか、そう思った。空港の職員らしい人は英語で答え、なにやら言うと、外人は笑い出していた。僕はひとまず安心したのである。空港の職員らしい人は僕に向かって中国語で、「この外人の後にあなたの泊まるホテルへ行きます。」、と言った。

 しかし、外人をおろした後でもまだ安心できないな、と思った。真夜中、人気の無い道路をどう走っているのか分からない状態では、不安が募る一方であった。

 3、40分ぐらい走ったであろうか。外人の宿泊するホテルに着き、外人は下車した。そのホテルは僕の宿泊するホテルよりも上等なホテルであった。

 僕の宿泊するホテルは2つ星で、運転手も住所を頼りに探している按配で、人っ子一人いない道路を、あっちに行ったり、戻ったりしてやっと着いた具合で、どこに行くか、行かされるか、心中穏やかではなかったのである。

 僕をホテルに降ろした後、この空港の職員らしい人は、「はい。」、と言って上海市当局のちゃんとした領収書をくれた。え、この人本当に空港の職員だったの、白タクと同じ事をしているのに、と僕は中国のあいまいさに驚いたのである。着いたのは夜中の1時を過ぎていた。


 これを契機として僕は事前に予約できる送迎タクシーを用いるようになった。タクシー乗り場で長蛇の列の後ろに並ぶ必要が無く、精神的にも楽になり、通常の運賃より30元ほど高かったが、夜中の送迎を考えると、この価格は良心的であり、安心できたのである。

 一方日本では、成田空港から都心に行く交通手段としては、バスの他に電車が2系統有り便利この上ない。行きについて言えば、僕は普通成田エクスプレスに乗るが、JRの事故があった時に備え、京成スカイライナーの時刻表を持参している。
 

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